ちろんそこにあったのは石碑だけ、祖母の
霊などなかった。でも私はマル一日かけて
墓参りしたのです。
祖母は私が高校生の時に死ぬまで一緒の
部屋で寝てました。皆が跡取りの私が東京
の大学に行き科学者になることに猛烈に反
対したのに、ただ一人賛成してくれたので
した。
85歳になった今でもよく祖母のことが
アタマによぎります。しかしそれはほんの
一瞬のことですぐ祖母の記憶は飛んでしま
います。しかし墓参りにかける数時間は、
頭に祖母の記憶が満ち溢れます。墓参り
は祖母の霊ではなく記憶に出会うために
やるのです。